
TEDで見つけた「大麻とてんかんについて知るべきこと」
There is something you should know about epilepsy and cannabis | Jokubas Ziburkus | TEDx Vilnius
とても興味深かったのでシェアします。
神経科学者のJokubas Ziburkus氏は、大学院生時代に研究室で聞いた一つの音が、彼の人生を変えたと語ります。それは、単一のニューロンから記録された電気的活動を音に変換したものでした。この体験が、彼を神経生理学の世界へと導いたのです。
私たちの脳は、興奮性ニューロンと抑制性ニューロンという2種類の神経細胞によって構成されています。これらのニューロンは、電気的な信号(活動電位)を発生させ、神経伝達物質を放出することで互いにコミュニケーションを取り合います。この精密な相互作用が、私たちの記憶、感情、運動機能などのすべてを制御しているのです。
さらに詳しく見ていくと、脳には実に150種類もの異なるニューロンが存在することがわかっています。Ziburkus氏は、これらのニューロンをそれぞれが独自の「方言」を持つ話者に例えています。これらの「方言」が調和することで、正常な脳のリズムが生まれるのです。
しかし、てんかんはこの脳のリズムが乱れる病気です。Ziburkus氏の研究で興味深い発見があります。てんかん発作時、予想に反して最初に異常な活動を始めるのは抑制性ニューロンだったのです。その後、抑制が破綻し、興奮性ニューロンが制御不能な活動を引き起こすことで発作が広がっていきます。
特に深刻なのが、Dravet症候群と呼ばれる小児てんかんです。この症候群では、週に数百回もの発作が起こり、発達障害や死亡リスクを伴う極めて重篤な状態に陥ることがあります。
ここで注目されているのが、大麻由来の成分です。実は、人体には内因性カンナビノイドシステムと呼ばれる仕組みが備わっており、脳に多く存在するCB1受容体と、免疫系で重要な役割を果たすCB2受容体が存在します。
大麻植物には70種類以上のカンナビノイドと、様々な芳香族物質(テルペン)が含まれています。中でもよく知られているTHCには抗けいれん作用がありますが、精神活性作用も持ち合わせています。一方、CBDは精神活性作用を持たず、純粋な抗けいれん作用を示すことがわかっています。
Ziburkus氏は、コニャックの例を挙げて説明します。アルコール度数40%のコニャックを子どもに与えることはできませんが、アルコールを除去し、有益な成分だけを残せたらどうでしょうか。同様に、大麻からTHCを除去または調整することで、より安全な治療法となる可能性があるのです。
現在、多くの子どもたち(てんかんだけでなく、自閉症やがんなども含む)が大麻エキスを使用して症状をコントロールしています。Ziburkus氏は、この分野の研究をさらに進め、偏見を取り除き、子どもたちを助けるための理解を深める必要性を訴えています。
神経科学の進歩により、脳の異常な活動をリアルタイムで観察できるようになった今、新しい治療法の可能性を探ることが、かつてないほど重要になっているのです。